生成AI研修に助成金は使えるのか。申請するのは、誰なのか

「助成金が使える生成AI研修を探しています」というご相談をいただくことがあります。

ここには、ひとつ大きな取り違えが混じっています。助成金を申請するのは、研修を提供する会社ではありません。研修を受ける企業、つまり発注する側です。

そうすると、「助成金が使える研修会社かどうか」で候補を絞り込む探し方は、そもそも成り立たないことになります。使えるかどうかを決めているのは、相手の会社ではないからです。

この記事では、誰が申請するのか、研修会社には何を聞けばいいのか、稟議に入る前に何を確かめておくかを整理します。

なお本記事は、2026年8月時点で公開されている制度の情報をもとにした整理です。当社は社会保険労務士ではなく、要件の判定をする立場にもありません。最終的な確認先は、あくまで管轄の労働局です。

申請するのは、誰なのか

生成AI研修は、人材開発支援助成金の対象になり得ます。この助成金は、従業員に訓練を受けさせた事業主に対して支給されるものです。主語は事業主、つまり受講する企業の側です。

研修会社は、申請の当事者ではありません。研修会社にできるのは、企業が申請するときに必要になる書類を出すところまでです。

ここを取り違えると、社内の段取りが丸ごとずれます。「研修会社が手続きをやってくれるはず」という前提で稟議を進めたあとに、実際に労働局とやりとりするのは自社の人事・総務だと分かる。担当も日程も組み直しになり、研修の実施そのものが後ろにずれる——という流れです。

つまり、助成金は研修に付いてくるサービスではなく、自社が主体になって進める手続きです。最初にここを押さえておくと、後の段取りが崩れません。

「国の認定を受けた研修でないと使えない」は本当か

いいえ、そうではありません。研修を提供する側が国の認定を受けている必要はありません。 かつてあった事前認定の制度は廃止されています。

「認定事業者です」「認定講座です」といった表記を見かけることがあります。それ自体が悪いわけではありませんが、現行の制度で助成の可否を左右しているのは、そこではありません。認定の有無を条件に研修会社を選別しても、支給されるかどうかは動かない、ということです。

では何を見ているのかというと、訓練の中身や時間、記録が要件に合っているかどうかです。そして、その判定をするのは労働局です。研修会社でも、比較サイトでもありません。

この一点を知っているだけで、候補の絞り方が変わります。「助成金対応」と書かれているかどうかで選ぶ理由が、なくなるからです。

研修会社には、何を聞けばいいのか

「助成金は使えますか」と聞くと、たいていは「使えます」と返ってきます。この答えは、判断の材料になりません。使えるかどうかを決めるのは労働局であって、答えている側ではないからです。

聞くべきなのは、制度の可否ではなく、書類の話です。

  1. カリキュラム(訓練の内容・実施日・時間)を、申請に使える形で出してもらえるか
  2. 実施記録(誰がいつ、どれだけ受講したか)を残して渡してもらえるか
  3. 請求書や領収書を、申請で必要になる区分に分けて出してもらえるか
  4. こちらが用意する様式への記入や証明に対応してもらえるか

ここは「対応しています」と即答できるかどうかで、はっきり差が出ます。過去に実際に出したことがある会社は、何を求められるかを知っているので話が早い。逆に、営業文句として「助成金対応」と書いているだけの場合、書類の話になると急に歯切れが悪くなります。

当社も申請に必要な書類の発行には対応していますが、支給を保証するものではありません。そこは、どの研修会社でも同じです。

助成金を前提に選ぶと、なぜ損をしやすいのか

もうひとつ、順番の話をします。

助成金は、原則として先に支払って、後から受け取るものです。研修費はいったん自社から出ていきますし、審査を経て決まる以上、思ったとおりに受け取れないこともあり得ます。

ここから導かれる判断はひとつです。助成が降りなかったとしても妥当な投資と言えるかどうかで、研修を決めておく。 助成金の額を先に見込んで「実質これくらいだから」と社内を通してしまうと、審査の結果しだいで話が崩れます。稟議の中身も、担当者の立場も、後から効いてきます。

もうひとつ、助成金の対象になりやすいかどうかを基準に研修を選ぶと、中身より形式が優先されるという副作用があります。時間数や形式を要件に寄せることはできても、そうやって選んだ研修が自社の業務を変えるとは限りません。研修の費用が何で決まるのかは生成AI研修の費用相場と、使える助成金の考え方に整理しました。マーケティング部門のように、成果物がそのまま社外に出る部署では、研修に求めるものがまた変わります。こちらはマーケティング部門向けAI研修は、汎用の研修と何が違うのかで書きました。

順番としては、まず研修の中身を決めて、そのあとで助成金が使えるかを確かめる。逆にしないことです。

稟議に入る前に、確かめておくこと

社内で話を進める前に、この4つを片付けておくと、後戻りがほとんど無くなります。

この順で進めると、助成金は「あれば助かるもの」という位置に収まります。そこが、いちばん扱いを間違えにくい置き方だと考えています。

なお当社は、自社のマーケティング(集客・メール配信・SNS・計測)そのものをAIエージェントで運用しています。何をAIに任せ、何を人が持つかの線引きは私たちの働き方で公開しています。研修でお伝えしているのも、その運用で実際に効いた設計です。

制度の要件と受給の可否は、必ず管轄の労働局にご確認ください。そのうえで、研修の中身をどう設計するかは別の問題です。後者についてのご相談はお問い合わせからお願いします。

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