AI導入の見積もりは、どの行に何が乗っているのか

同じ内容をお願いしたはずなのに、A社とB社の見積もりが倍近く違う。AI導入のご相談で、いちばんよく聞くお困りごとです。

この差を「作業量の差」だと思って読むと、たいてい外します。金額の差が出ているのは工数ではありません。実際は、どこまでを誰が持つかという線引きの差です。安いほうが手を抜いているわけでもありません。多くの場合、その行がそもそも見積もりに乗っていないだけです。

乗っていない行は、消えたわけではありません。あとで自社の負担として出てきます。見積もりを比べるというのは、総額を比べることではなく、どの行が抜けているかを見つける作業です。

なぜ総額だけを比べると外すのか

考えてみてください。見積書に「AI導入支援 一式」とだけ書いてあったとします。この一行から、何が読み取れるでしょうか。

ほとんど何も読み取れません。設計まで含むのか、動く形にするところまでなのか、動き出したあと誰が面倒を見るのか。全部この一行の裏に隠れています。

そして稟議の場では、この一行がいちばん困ります。「なぜこの金額なのか」と聞かれたときに、答えようがないからです。総額は交渉の材料になりますが、内訳がないと、社内で説明する材料になりません。

つまり、見積もりを取る目的は金額を知ることではありません。自社が何を買おうとしているのかを、言葉にしてもらうことです。

AI導入の見積もりは、どの行に何が乗っているのか

大きく4つに分かれます。この4つに分けて書き直してもらうだけで、比較はかなり楽になります。

1. 初期設計

何をAIに任せ、何を人が持つかを決める工程です。対象業務を選び、出力を誰がどの段階で確認するかを決め、渡してよいデータと渡さないデータの線を引きます。

ここは成果物が地味なので、見積もりから落とされやすい行です。ただ、止まる会社のほとんどはここを飛ばしています。どの業務から手をつけるかの考え方は社内へのAI導入は、どの業務から手をつけるべきかに書きました。

2. 運用

動き出したあと、毎月発生する仕事です。出力を見る、うまくいっていない指示を直す、業務の変更に合わせて手を入れる。

AIは一度作れば終わり、という前提で組まれた見積もりは、この行がありません。実際には、作った直後がいちばん手がかかります。

3. 教育

社内の人が使えるようになるための行です。研修の費用は、公開されている情報を見るかぎり1名あたり6万円〜30万円と幅があります。統計調査ではなく、各社が掲載している価格を集めた範囲の話なので、目安として見てください。費用の考え方は生成AI研修の費用相場と、使える助成金の考え方に整理しています。

助成金を検討される場合、押さえておくべきことが3つあります。申請するのは研修を受ける企業側であって、研修会社ではないこと。研修を提供する側が国の認定を受けている必要はないこと(事前認定の制度は廃止されています)。そして、支給されるかどうかは労働局の審査で決まるため、研修会社が保証することはできないことです。実際の可否は、管轄の労働局にご確認ください。

4. ツール利用料

AIの利用料、周辺サービスの月額など、外部に払い続けるお金です。ここは支援会社の売上ではないので、誰が契約主体になるのかを必ず確認してください。支援会社の名義で契約されていると、契約を終えたときに何も残りません。

「安い見積もり」では、どの行が落ちているのか

安い見積もりが悪いという話ではありません。落ちている行が自社で持てるなら、安いほうが正解です。問題は、持てないまま契約してしまうことです。

よくあるのは、次の形です。

いずれも、契約の時点では気づきません。気づくのは、たいてい半年ほど経って「思ったほど変わっていない」となったときです。

発注前に、何を聞けばいいのか

見積書を前にして、次の4つを聞いてみてください。答え方でかなり分かります。

  1. この金額に、動き出したあとの費用は含まれていますか。含まれていない場合、翌月からいくらかかりますか
  2. AIに任せる範囲と、人が確認する段階は、誰が決めますか。それはこの見積もりのどの行ですか
  3. ツールの契約は、どちらの名義になりますか。契約が終わったとき、何が当社に残りますか
  4. 社内の担当者が使えるようになるまでの支援は、どこまで入っていますか

はぐらかされる質問があれば、そこが落ちている行です。金額の妥当性より先に、この4つに具体的に答えられるかどうかを見てください。支援会社の選び方そのものはAIマーケティング支援の会社は、何を見て選べばいいのかにまとめています。

当社の場合

当社のAIマーケティング支援と企業向けAI研修は、いずれも月25万円〜でお受けしています。月額の形にしているのは、初期設計と運用を切り離さないためです。作って納めて終わりにすると、上に書いた「運用が落ちている見積もり」を自分たちで作ることになります。

当社自身も、自社のマーケティング(集客・メール配信・SNS・計測)をAIエージェントで運用しています。外に出る直前には必ず人の承認を挟んでいて、AIが単独で公開や配信をすることはありません。この線の引き方は私たちの働き方で公開しています。

見積もりの読み方や、自社ならどの行が要るのかについては、サービス一覧をご覧いただくか、そのままご相談ください。

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